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2010年5 月20日

ジョージア工科大学のHealthcare Robotics Lab

 アトランタ報告をもう1本。ジョージア工科大学ではCharlie Kemp助教授が率いるHealthcare Robotics Lab(ヘルスケア・ロボティクス研究室)も訪問した。ここには、 技術的な話が非常に詳しく、いつも勉強になるロボット系ブログ「Hizook」を運営するTravis Deyle氏が博士課程に在籍しており、彼を通じて訪問の機会を得たのだ。

   この研究室は名前の通り、ヘルスケア分野で活用できるロボットの研究開発に取り組んでいる。先日、Willow Garage社が発表した、ロボット・プラットホームPR2の行き先の1つでもあり、同研究室ではPR2を使って在宅高齢者の支援ロボットの研究に取り組む計画だ。

 Travisさんは現在、UHF帯RFIDタグを活用することでロボットに家庭内の様々なタスクを行わせる研究をしている。タグを電気のスイッチや引き出し、リモコンといった部屋の中のモノにはり、ロボットはそれをアンテナで検出することで電気を消す、引き出しを開ける、リモコンを取って来るといったタスクを実行する。

Charlie and Travis

(写真:左からKemp助教授、RFIDの実験に使われているロボット「EL-E(エリー)」、Travisさん」) 

 この方法の大きな利点は、タグのIDによってロボットの行動を規定することができるという点だ。例えば、同じような形をした薬のビンが複数並んでいるような場合、ロボットはビジョンだけに依存することはせず、データベースに保存されたタグ情報を参照しながら、正しい薬を取って来ることができる。また、「このリモコンはソファの横に必ず戻す」とか、「この取っ手は右向きに回す」といった情報を細かく設定できる。

 従来の物体認識技術の問題を避けながら、ロボットに確実にタスクを行わせる、おもしろい方法だと思った。

 関心のある方はここから論文をダウンロード可能。Travisさん、Kemp助教授のほか、Hai Nguyen氏、RFIDの専門家であるデューク大学のMatt Reynolds助教授の共同研究だ。博士課程のHaiさんはレーザー光でロボットに指示する話で2年前に話題になった人だ。   

 このほか、ヘルスケア・ロボティクス研究所では介護支援ロボットのCody など様々なプロジェクトに取り組んでおり、今後、PR2を使った研究成果との相乗効果が期待される。

El-E

(写真:エリー)














RFID tag






写真:電気のスイッチの下にRFIDタグ。タグは1つ25セント以下)

2010年5 月14日

ロボットで機器の操作性を定量評価へ

 ジョージア工科大学の上田淳助教授の研究室にはもう1人、日本人がいる。奈良先端科学技術大学院大学の栗田雄一氏が、客員研究員として1年間の予定で滞在している。

 栗田氏が関心のあるのは、触覚の研究だ。例えばカメラや携帯情報端末などの操作性を試験しようとすると、評価した人間のその日のムードとか「上司がこう言ったから」といった主観的条件で結果が左右されがちで、大人数にテストしてもらわないと有意な結果が出にくい。そこでロボットのハンドをセンシング・デバイスとして活用し、「操作性」を定量評価したい、というのが同氏の考えだ。

 もちろん最終的に人が「これは使い勝手が良い」と感じ、製品を購入するのは主観的な理由からであり、「ロボットで取得したデータを、いかに人間の主観的感覚と関連付けるかが私の研究の一番のチャレンジ」と栗田氏は言う。

 今後、高齢者向けの製品開発にはこうしたロボットによる定量評価が重要になってくるように思う。というのは、自分の周りを見ていてそう感じるが、年をとってくると、だんだん自分にとって何が便利なのか分かりにくくなってきているようで、周りが「これがいいみたいだから使ってみて」と示さないといけないようだからだ。高齢者を対象としたユーザビリティー調査はなかなか難しいでしょうし。

 あと、最近我が家はマットレスを買い換えたのだが、店舗を数店まわって、いくつものマットレスにねっころがってみて、最終的にどれが一番いいのかわけ分からなくなってストレスがたまった経験がある。結局、そのうちの1つを買ったのだが、高い買い物だし「これでよかったのかな~」と。私の寝癖なんかをインプットしたロボットが、比較してくれたら楽だったろうな。

Kurita san  

 写真はジョージア工科大学のマスコットであるYellow Jacket(スズメバチ)の絵の描いてある学内バスの前で、栗田氏。


 


2010年5 月13日

人工筋肉でロボットと人間の違いを明らかにする

 Jun Ueda ジョージア工科大学では機械工学科の上田淳助教授を訪問した。同助教授は京都大学から奈良先端科学技術大学院大学、マサチューセッツ工科大学を経由し、2年前に現在のポジションに着任した。

 上田助教授は現在、ピエゾ素子を使った新しいタイプの人工筋肉(アクチュエータ)の開発に取り組んでいる。従来の圧縮空気を使った人工筋肉や形状記憶合金を用いたものよりも反応が早く、より人間の筋肉に近い動きを実現できるのが利点だ。個々のピエゾ素子は電圧に対して変位量が小さく、大きく伸び縮みできないため、そのままでは使えない。そこで、複数の素子をつなげてその上に機械部品をかぶせる構造にし、全体として大きな動きを出せるようにしたのが特徴だ。小さな素子を多数つなげた「Cell構造」は、部分的に壊れても置き換えられ、全体の太さや長さを変えられるといった有利性も持つ。

Actuator and model

(写真:ピエゾ素子[右]と人工筋肉のモデル[左])  

 Actuator 同助教授がこの新しいアクチュエータを使って調べたいのは、人間の個々の筋肉の活動だ。人間の筋繊維は脳から与えられる電気信号(パルス)によってぎゅっと縮むが、これを人工筋肉で再現しようとすると実は難しい。人工筋肉に等間隔でパルスを与えると、カクカクとした動きになってしまう。人間の動きが滑らかなのは、パルスが何らかちょうど良いタイミングで送られているからではないかと考えられる。

  そしてここからがおもしろい。上田助教授は次のように考える。「1つひとつのパルス(確定的な信号)に対して、どの細胞が反応するかは、確率的なのではないか。パルスによって反応する細胞が変わってくるが、細胞の数が多いため、全体として人間の動き(アウトプット)は確定的になる。こう考えると腕を振るといった人間の動きが1回1回ぶれることも説明がつく。ロボットの動きはぶれない。それが人間とロボットの違いであり、だから新アクチュエータを使って、人間の筋肉の動きを工学的に再現してみたい。ナチュラルな動きとメカニカルな動きの差が分かればおもしろい」

 一方、筋活動の研究を実世界で応用することも考えている。脳卒中や脊髄の損傷を経験した患者は、実際にどこの筋肉がダメージを受けているかは個々人でまちまちで、その場所を特定するのが難しい。そこで、個別の筋肉に対して負荷を与えることでその場所を診断し、問題のある筋肉を選択的にリハビリできるようにしたい。診断とリハビリの両面からこうしたことを実現する「power (force) resisting robot」を開発しようというのが上田助教授の目標だ。

 このような新しい機械の実用化には異分野の研究者の協力が欠かせない。日米の両方で研究開発に従事してきた同助教授が「日本に比べ、米国では工学系の研究者と医師・病院が協力しやすい」と話していたのも印象深かった。

2010年5 月12日

ジョージア工科大学の鶏肉解体ロボット

 アトランタではFIRSTロボコンの取材だけでなく、ジョージア工科大学を訪問する機会があった。同大ではロボット分野の研究が盛んで、聞くところによると米国において「Robotics」で博士号を取得できる数少ない(3?)大学の1つであるとか。同大学で取材した話を3回に分けてお伝えする。

 まずは同大の一部で、地元企業や政府の具体的要望に応じて問題解決型の研究開発に取り組むGeorgia Tech Research Institute (GTRI)を訪問した。ここの食品加工技術部で、鶏肉のsmart deboning system(知的な脱骨処理システム)を見せてもらうためだ。(写真撮影はさせてもらえなかったので、後から写真を送ってもらった。)

Smart deboning system 


  カメラ2台を使った画像処理システムと鶏肉を円錐形の台にのせて流すライン、肉を切るナイフの3部構成だ。鶏の肩の部分に切り込むが、骨の破片が食肉に残らないように、ナイフの刃先にセンサーをつけて無理やり切断するのではなく、力を制御しながら骨の周りを切れるようにしたのがミソだ。

 ジョージア州の鶏肉産業は1日当たりの生産量が1万トンを超え、大きい。しかし鶏肉加工の職場環境は好ましくなく、労働者の確保が難しい。そこで、できるだけ加工工程を自動化し、コスト低減をしたいという産業界の要望が、今回のシステム開発につながった。今後1,2年で実用化する計画だ。

 ロボットの実用化で、こういった実際の問題を解決するために産業界と大学が連携するのはすばらしいと思う。

 ところで、GTRIの訪問を通じて、日本でもゴーデックスという食鳥処理機械メーカーがあることを知った。おもしろいなと思ったのはGTRIのシステムがムネ肉をきれいに切り出すことを目的としているのに対し、ゴーデックスのシステムはモモ肉を対象としているようであること。日本だとモモのほうがムネよりもグラム単価が高いのだが、米国では逆で、ムネのほうが高い。米国では脂身のない部分が好まれているようだ。スーパーでこれに初めて気付いたときに感動した覚えがある。

 ロボットに求められるタスクが国によって違うという一例だ。

2010年3 月16日

Cajun Crawler-ロコモーションがかわいい!

 動画の掲載日を見ると2008年12月なので、決して新しいものではないのですが、私は初めて見たので。

 生き物みたいで、セグウェイより断然カワイイ。乗ってみたい。買ったらすぐに名前つけちゃうだろうな。ビデオの音量大きいのでご注意。

 Make:より