96 posts categorized "日本のロボット"

2012年4 月18日

DARPAロボティクス・チャレンジに日本も参加を!ヒト型ロボットの第一人者インタビュー

DARPAロボティクス・チャレンジについて、Wall Street Journal日本版のロボット・コラムで書きました。これは非常に重要な話なので、ぜひご覧になってください。

このコラムのために、ヒューマノイドの世界的権威である、井上博允・東京大学名誉教授とコンタクトを取りました。コラムの中でコメントを使いましたが、質問のやり取り全文を、ご本人の了承を得たうえで、以下に掲載します。(赤字はGetRoboが強調するべきだと思った部分です。)

Q1.なぜこのようなプロジェクトが日本主導で立ち上がらなかったのか。

A1. 当然、日本が立ち上げなければならないと思い、しかるべき所に話を持って行って努力した。しかし、みんな原発事故の当面の対策で頭がいっぱいで、その重要性を認識してもらえていない。おそらく、決定できない、リスクをとらない日本社会が原因だと思う。私はこの問題は、世界が挑戦しなければならない課題だと思ったので、昨年11月のDLRのシンポジウムで講演する機会があった際に、「Grand Challenge: Send a Humanoid into Severe Environment to Work as Human Agent」という国際協調プロジェクトの提案を行なった。講演後のアメリカやヨーロッパにおける反応と比べると、案の定、日本の反応は弱かった。

月にヒューマノイドを送る計画に関する政府の懇談会でも、新しい宇宙基本計画の目的が宇宙科学に加えて新産業創成と国家安全保障という3本柱になったのだから、技術開発のシンボルにもなるし、開発した技術を原子力発電所にも適用可能であるという位置付けからも、大きな意義があると説明した。しかし、懇談会では理解が得られなかった。

一方、米国ではすぐにNASAがこの提案にエコーして、「プロジェクトM」なるものを打ち出した。「プロジェクトM」も結局は予算がつかずに立ち消えになったが、それでもこのプロジェクトの計画書に「The nation that leads the industry of robotics, the nation that designs, produces, and markets, will dominate the global economy in this century.(ロボットを設計、生産、マーケティングし、ロボット産業をリードする国こそが、今世紀に世界経済で優位に立つ)」と書かれていたのが印象深い。日本はその後、はやぶさフィーバーと震災で、すっかり月開発は忘れ去られた。おそらく日本の技術者も政策担当者も、この文言に気をとめている人は少ないと思う。

昔話になるが、日本が高度成長の時代には、このような言葉に沢山の人が反応した。ところが、すっかり社会が変わってしまったのか、今はだれも反応しなくなっているように感じる。アメリカとヨーロッパ、そして、韓国の人は今でもこれに反応する人が多いと思うのだが。

Q2.このプロジェクトに日本から参加があることを期待しているか。

A2. 当然、参加すべきだと思う。予想外に早くDARPAが計画を立ち上げてくれた今、日本は参加しなければ、技術面でも世界に追い越されることは目に見えている。


せっかくDARPAが良い計画を実行に移してくれたのだから、世界のヒューマノイドを牽引してきた日本としてはDARPAにエコーバックしなければならないと思って可能性を探っている。しかし国内の壁は厚い。参加しないための言い訳としてナイーブな軍事予算尻込み論に陥るのではなく、自信があればトラックAでもBでも応募してみるべきだし、DARPAの予算を避けたいのであればトラックCでもDでもやるべきだ。Urban Challengeが無人自動車を実用化したように、今回のロボティクス・チャレンジを通じて3年後にはヒューマノイド技術の世界標準が明確になる。リスクをとって挑戦する日本チームが必要だし、そのための財政支援が不可欠だ。

DARPAが計画を発表してからすぐに、博士号を取得したばかりの若手研究者が私のところにやってきて、企業や研究組織では束縛が強いので、現在の職を辞めて自分たちの会社を作ってロボティクス・チャレンジに参加したいと言ってきた。彼らはトラックAかDに参加して自己技術で勝負したいので、5億円位を投資してくれるところを探していると言う。彼らは自分の将来をかけて、リスクをとって挑戦する仲間だけでやりたいと言う。頼もしい話であり、荒削りながら技術は持っている連中である。日本の産業が再生するのに必要なのは、このような若者のチャレンジに投資し、彼らのチャレンジの足を引っ張らない社会を作ることだ。ベンチャーキャピタルや商社、異業種で技術開発に投資する意欲のある企業、私的ファンドなど、日本の技術立国のために投資してくれるところがあれば、私は彼らとの仲立ちをしたい。なんとかしなければならないと思っているので、リスクをとって決断できる企業経営者、政策立案者、技術者を求めて、私は行動したいと思う。

Q3.福島という現実問題を抱えている日本が、こうした架空の「競技」に参加することに対してはどう思われるか。このプロジェクトを福島のリアルの問題と関連付けることはできないのか。

A3.これは架空の競技ではない。我々が福島から学んだことは、電源喪失後の予期せぬ緊急事態が起きても、被害を最小限にとどめるような技術的な備えをしなければならないということだ。私のDLRでの提案にしてもDARPAのチャレンジにしても、人の代理として人間が行けない所に入って行って作業するロボットとして、限りなく人に近い機械が必要である。競技と銘打っても、実際は非常に厳しい技術の切磋琢磨の場であり、参加者の最先端の技術力が白日のもとにさらされる。DARPAの課題1から8までの内容は、最初のチャレンジとしては可能なレベル設定である。その後、逐次に高度化すれば、福島のようなリアルの問題にも対応できると理解すべきである。

これをロボコンやロボカップと同列の競技ととらえてはならない。災害対応はヒト型ロボットのキラー・アプリケーションであるととらえるべきであり、米国はこのキラーアプリの必要性を国家レベルで認識し、それを産業創生に結びつけたというのが今回のプロジェクトの真意。ヨーロッパもそうするだろうし、日本も早くそのように認識して欲しい。日本が挑戦しないことは、最初から技術競争に敗北したことを意味する。産業技術にも波及するので、参加しないわけには行かない。世界のどこかで過酷事故が起こった時、直ちに提供できるヒューマノイドを準備しておきたいと思いませんか。

2012年3 月15日

ソフトバンクとアルデバラン、続報(3月15日現在)

3月11日に英国の大手経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた、ソフトバンクによる仏アルデバラン・ロボティクスへの出資に関する記事について。

GetRoboはその後、アルデバランとソフトバンク、インテルのそれぞれに、この件について問い合わせました。

ソフトバンクはFTの報道に関して「ノーコメント」(同社広報)。「数字はともかくとして、出資するための話し合いを進めていると理解してもよいか」という質問に対しても「ノーコメント」(同)でした。

「インテルはアルデバランに関してコメントできない」というのがインテル広報のコメント。

(記者注:ソフトバンクやインテルのような株式公開会社は、全くの誤報だった場合は報道を否定します。今回は否定はしていません。)

アルデバラン広報からは「FTの報道は間違っている。彼らはデータが誤りであることを知りながら、報じた」との憤りの返事がありました。そして、「この報道によって、フランスの公的機関など、潜在的な資金的パートナーとの関係上、我々は微妙な立場に立たされるはめになった。彼ら(=潜在的投資家)はアルデバランが日本の会社になったという話を読んで喜んでいないからだ」

この返事をもらって、誤りなのは「データ(=出資額や出資比率)」なのか、それともソフトバンクが出資するということ自体が誤報なのかがはっきりしなかったので、再度確認したところ、次の返事がありました。

「記事中のすべてのデータが誤りである。我々は創業以来、individual market(=一般消費者市場のことをさすと思われる)への参入を計画してきた。それを実現するためには、我々は小さなBtoB SMB 会社から、もっと大きな家電会社に転換しなければならない。これは長期のプロセスであり、それを実現するために、当然のことながら新しい資金的パートナーと契約を結ぶことになる。しかし、具体的な情報を発表するまでは、詳細は明らかにできない」

このように、3社とのやり取りから、GetRoboは以下のような状況だと推測します。あくまでも推測です。

一般消費者向けのロボット開発には多額の資金が必要であり、アルデバランは長期的に頼れる資金源を探している。そのうちの1候補がソフトバンクであり、現在、両社の間で話し合いが進められている。しかし、最終的にソフトバンクが8割も出資するというのは考えにくい。なぜならば、アルデバランは国策会社ではないけれど、ロボット分野におけるフランスの威信をかけた会社であり、日本企業が大株主になることはありえないと思われるため。

以上です。この件、また何か進展があれば、ご報告します。

2012年3 月12日

ソフトバンクが仏ロボット・ベンチャーの最大株主に

ソフトバンクがフランスのアルデバラン・ロボティクスに約1億ドルを出資したという。英フィナンシャル・タイムズが報じた。(記事を読むには無料登録が必要。)これにより、ソフトバンクはアルデバラン社の株式の80%以上を所有することになると書いてある。さらに、開発に拍車を掛けるため、ソフトバンクは4,000万-5,000万ドルを追加投資する予定だ。

これは超びっくり!!!!!

アルデバラン社といえば、米インテルが昨年6月に出資を発表してから1年も経たないが、今回、ソフトバンクはこのインテルの持ち株も買い上げたらしい。

アルデバラン社の小型ヒューマノイド・ロボット「Nao」は全世界で1,500台以上が販売された。さらに、現在は大型のヒューマノイド「Romeo」の開発に取り組んでいる。記事によると、同社の社員数は現在150人。フランスとボストン、上海に研究所を持っており、東京にも研究所を開設する計画だ

みなさん、どう思います???ソフトバンクがロボットの分野に投資するのは初めてのように思うのですが。

昨年の震災後、アルデバラン社の創業者兼CEOのBruno Maisonnier氏はこれから災害対策ロボットを開発したい意向を表明していたが、そうしたロボットの開発がソフトバンクの後押しで進められるということなのか。

でもなぜ、ソフトバンクは日本のロボット・ベンチャーに投資しないのか。それともこれからするのか。

こちらに続報あり。

以下、Romeoの動画を再掲載。

2012年2 月27日

産業用ロボットにもオープンソースの波

オープンソースのロボット用開発プラットホーム「ROS」を産業用ロボットに応用する「ROS-Industrial」というプロジェクトが正式に発表された

Teachable robot(教えやすいロボット)」というのが今後2,3年のキーワードかな、と取材をしながら感じる今日この頃だが、産業用ロボットもその例にもれず、ROSを使って産業用ロボットのプログラミングを楽にしようというのがプロジェクトの主旨だ。

ROSの開発をリードするWillow Garage社のSteve Cousins氏を久しぶりにインタビューする機会があり、彼は「これまで研究開発用ロボットと産業用ロボットの間には大きな隔たりがあったが、ROSによってその間を橋渡しができるようになった」と語っていた。

今回の発表の中心は米国の産業用ロボットメーカー、アデプト・テクノロジーだが、実はこのプロジェクトに先に参加していたのが、安川電機の米国法人のMotoman Robotics事業部。以下にMotoman&ROSの動画。協力しているのは、テキサス州の独立研究開発機関、Southwest Research Institute(日本語のサイトがあった!)。

安川電機はテネシー州のベンチャー企業とも提携しており、海外提携に積極的ですね。

2011年11 月27日

「J, ROBOT」-米国人による日本のヒューマノイド・ロボットに関するドキュメンタリー

「J, ROBOT」という日本のヒューマノイド・ロボットに関する1時間のドキュメンタリー映画が完成したという。ちょうど私が日本にいたときに試写会があり、残念ながらまだ見ていないのだが、制作者のMichael Garrigues氏から連絡があった。

同氏によるとこの作品は、「日本人がヒューマノイド・ロボットに夢中となる独特の文化的、社会的原動力を追う。日本の産学官はいっしょになって、労働力となるヒューマノイド・ロボットの開発のために時間と金を投じている。そのすさまじい開発活動に拍車を掛けているのは、人口の高齢化と若年の労働力不足といった要因だけではない。“J, Robot” は、日本のロボットを現実に飛躍させる際のカギとなる、日本のユニークな文化と芸術的感性、 技術的差異を探求する」

試写会に行った人によると、映画は神戸の鉄人プロジェクトを細かく追い、舞台裏を撮影しているという。

なお、このドキュメンタリーを実際にテレビや映画祭などで放映・上映してもらう活動のために、同氏は募金をしている。関心のある読者はここのサイトで予告編の動画が見られるほか、寄付ができるようになっている。30ドル以上寄付すると映画のDVDがもらえるとのことで、GetRoboも30ドル寄付した。

以下はGarrigues氏が送ってくれた神戸の鉄人28号の写真。

JRobot Tetsujin