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2011年10 月 4日

[IROS 2011] サンドイッチを買いに行くロボット

とっくにIROS会議は終わっているのですが、もう1本だけ。

東京大学の稲葉雅幸教授の研究室(JSK)とドイツのミュンヘン工科大学の共同研究。どちらの研究室もWillow Garage社のPR2ベータプログラムに参加している。PR2がサンドイッチを買いに行くことができるようになったという。

この研究のミソは、PR2がサンドイッチの「在り処」を知らないこと。でも、サンドイッチは食べるものであり、食料品はたいがい冷蔵庫に保存されていることから推測して、まずは冷蔵庫の中を探すところから始める。そこで見つからないので、次に外に買いに行く。自律的にだ。言葉の意味を解釈しながら検索する「セマンティック・サーチ」の技術を活用するという。

以下がその様子をとらえた動画。IEEE Automatonより。

IROSのワークショップで発表されたが、私は残念ながら参加できなかった。

2011年8 月10日

Willow Garageが片腕のPR2を発売

 Willow Garageが、アームが1本のPR2、「PR2 SE」(写真)を発売すると発表した。PR2の価格が40万ドルであるのに対し、新しいPR2 SEの値段は285,000ドル。(超・円高の今なら約2,200万円。)

  PR2_SE_01

PR2の主な構成部品の中で、「最も高機能で高価な」(同社広報担当者)アームを1本減らすことで、ロボットの価格を下げ、より多くのユーザーに使ってもらうのが狙いだ。PR2と同様、オープンソースに貢献する研究グループには30%のディスカウントが適用され、PR2 SEの価格は20万ドルを切ることになる。

 現在、世の中に出回っているPR2の台数は、同社のベータ・プログラムで無償提供を受けた11の研究機関を含め、20数台。(このほかに10台がWillow Garage社内で稼働中。)英国とカナダ、インドでも使われいているという。

最近はPR2がクッキーを焼くビデオが注目を浴びたが、このように腕が2本必要な実験だけでなく、1本でも可能なタスク、研究はいろいろあると同社は考えている。

発表資料からはNSFのサイトにリンクが張られており、このグラントでPR2 SEを購入するグループが出てくるのかな。

2011年6 月27日

米国のロボット研究グループの広報戦略

少し前の話になりますが、日本ロボット学会誌2011年3月号の特集「研究者が『ロボット』を伝えるために」で、記事を書かせていただきました。ちょうど地震と前後して発行され、その後、ばたばたしていたため、今日になっての報告です。

私は「米国のロボット研究グループの広報戦略」という題名で文章を書きました。その内容は、私が以前からずっと書きたいと考えていたものです。日本ロボット学会の会員以外の方々にもぜひ読んでいただきたいと思い、同学会の了承を得たうえで、GetRobo Premiumに掲載しました。

地震、原発事故を経て、日本の政府、企業、大学、個人は、かつてないほどコミュニケーション能力が問われています。ロボットの研究に限らず、いつ、だれに向けて、何をどう伝えるのか。どうやって理解してもらい、味方・仲間・顧客になってもらうのか。目的を明確に定め、その目的に応じて効果的な情報発信をすることが極めて重要です。

「米国のロボット研究グループの広報戦略」では、最近の米国における広報の成功例を取り上げています。ぜひご覧ください。

 (GetRobo Premiumにはパスワードが必要です。パスワードが必要な方はこちらから登録してください。)

Willow Garageがテレプレゼンス・ロボット会社をスピンオフ

Willow Garage(WG)が地元の記者10人を呼んで、食事会を開いた。GetRoboも招かれ、参加した。食事会のテーマは「パーソナル・ロボット市場の行方について」。同社からはCEOのSteve Cousins氏と、Director, Open Source DevelopmentのBrian Gerkey氏。

Steve Cousins この日に知ったニュースは、同社がSuitable Technologiesというベンチャー企業をスピンオフしたこと。WG社初のスピンオフ会社だ。同社がもともと社内で利用するために作ったTexaiというテレプレゼンス・ロボットをベースに、新製品を2012年第2四半期に発売予定という。Cousins氏(右写真)によると、WG社創業者のScott Hassan氏が新会社のCEOに就任し、Hassan氏は今後そっちのほうにメーンに力を注ぐことになるとのこと。AnybotsVgoの製品と比べてどうなのか?と記者の1人が聞いたところ、「ロボットに搭載するスクリーンサイズを大きくするので、かなり違った使用感になるだろう」(Cousins氏)との話だった。新会社にはWG社以外にも出資者がいるが、その名前は明かせないという。

WG社は「ROSを大衆に広めるため」(同氏)、TurtleBotを最近発表した。写真の中で左の小さなロボットがTurtleBotだ。WG社が直接売るのではなく、これらの会社が販売し、WG社は販売量に応じてわずかな利益を得られるという。日本では、TurtleBotの土台となるアイロボットのCreate(ルンバから掃除機能を取り除いたもの)が売られていないため、TurtleBotの発売も未定。

またPR2については、全世界で現在35台程度が稼動中とのこと。このうち10台はWG社内、11台がベータ・プログラムで世界の研究機関に無償提供されているので、残りが実際にWG社が販売したものになる。

Brian GerkeyGerkey氏(左写真)は、ROSの初期ユーザーが「critical mass」に達したため、今の自分の任務は「新しくこの分野に入ってきている人々はだれであるかを見極めること」だと語っていた。また、私が「過去1年の間に、パーソナル・ロボット市場にとって最もプラスの影響をもたらした事象は何か」と尋ねたところ、「Kinect」との答だった。下の写真はそのKinectを頭に載せたPR2。

PR2 with Kinect

 

 

 

2011年6 月12日

ロボットの研究開発に取り組む独ボッシュ

 Silicon Valley RoboticsについてWall Street Journal 日本版のコラムで書いた。 

 このグループの中心メンバーのひとつが独ボッシュ。私は今年3月にこのSilicon Valley Roboticsの会合に初めて参加し、その会場となったボッシュのパロアルト研究所を訪れた。そこでは、集まった地元のロボット関係者に対し、Willow Garage社の「PR2」を使ったロボットのデモが行われた。ロボットがTシャツをたたむデモだ。

 T shirt folding PR2 Willow Garage社はPR2のベータ・プログラムと称して、ロボットを11台、世界の研究機関に無償提供したが、唯一の民間企業としてこのプログラムに参加しているのがボッシュ。PR2のソフトはオープンソースで、このプログラムの研究開発成果は基本的に公開されるため、どうして民間企業であるボッシュが参加したのか、また参加できたのか、ずっと気になっていた。

 この集まりで私が知ったのは、ボッシュ・グループの親会社であるRobert Bosch GmbHが非公開企業であり、かなりフットワークの軽い会社であるということ。同社で研究開発に携わるのは世界で33,000人、研究開発費は2010年に40億ユーロ(約4,620億円)。このうち、「ロボット」の研究開発に携わっているのは40人で、うち6人がシリコンバレーのパロアルト研究所に在籍する。研究開発全体から見ればまだ小さいが、将来性の高い分野と社内では期待されている。

 パロアルト研究所のロボット研究のリーダー、Jan Becker氏によると、ここで取り組んでいる研究内容は5つ。

 1) Affordable sensing for PR2
 2) Touchless proximity sensor
 3) Shared autonomy
 4) PR2 Remote Lab with Brown University
 5) 3D mapping exploration

 またボッシュが、病院用の搬送ロボットを開発販売する米Aethon社に、傘下VCを通じて投資していることもここで初めて知った。

 同社がPR2ベータ・プログラムに選ばれたときに出したプレスリリースはここ。この中から抜粋すると、

The robotics team at Bosch Research and Technology Center North America (RTC) will focus on developing solutions for the personal robotics market by making robots safe, affordable and capable. The Bosch robotics team in Palo Alto closely collabo-rates with experts of the Bosch Corporate Research based in Stuttgart, Germany, who bring in additional expertise in sensing, signal processing and manufacturing. Research topics will comprise utilization of advanced sensor devices and advance-ment of robot human interaction.

The researchers will integrate advanced Bosch sensor technology, such as MEMS accelerometers, gyros and force sensors and air pressure sensors, in the PR2 to enable new applications and to accelerate the wide-scale deployment of robot tech-nology in new commercial and private environments. Bosch will supply a sensing system to allow touchless human robot interaction with the PR2 and increase robot safety through near range sensing. Also, Bosch will explore how a human can effec-tively interact with a PR2. Including a human in the loop will improve the robot’s per-formance and reliability. These improvements will allow robots to be deployed earli-er, at lower cost and in more complex environments. In addition, the Bosch re-searchers will also use the PR2 for automatic mapping and reconstruction of 3D en-vironments.

 ボッシュの持つ様々なセンサー技術をPR2のようなロボットに搭載してみて、新しいアプリケーションを見出したい考えのようだ。

 ちなみに、日本ではボッシュといえば一般的に自動車部品メーカー(世界最大手)と考えられているが、実はグループ会社を通じて家電の大手であることも付記しておきます。(うちのアイロンはボッシュ製。) だから、無人ロボット車にも関心があるし、家事支援ロボットにも関心がある会社です。